夜の街


 夜の街を歩いた。理由は終バスに間に合わなかったし、タクシー代もなかったからだ。というのは表向き。本当の理由は深夜の街を歩きたかったからだ。
 コンビニで地図を確認。何も買わないのはよくないと思って、缶ビールを一本買って出た。夜の冷えた空気の中を歩きながら飲むビールは気分がいい。
 実は若いときからこういうことが好きなのだ。すでにこれで四回目だろうか。最高に長いときで2時間かけたことがある。昼間ならおそらくこんなに長い時間歩けないだろう。中国にいたときも、街中から、町外れの自宅まで、一時間かけて歩いた思い出がある。あの時は仲間がいたが、日本で歩くときはいつも一人だ。
 夜の街は静かだ。昼間の喧騒がないだけではなく、景色が異なる。
 この日は、引っ越してきてからまだあまりなじみがないせいもあるが、山というか丘を二つほど越えなければならなかったために、疲れたのだろう。頂上まで来たところで方向を間違えてしまったようだ。また、コンビニに立ち寄り、地図を確認。ついでに、店の女の子に聞いてみる。店を出たときはもう、余りの遠さに絶望感がただよい、足が棒になってしまった。思わず通りかかったタクシーに向かってついに手を上げてしまった。
 夜は百鬼夜行の雰囲気が漂い、得たいの知れない化け物があちこちにいて、惑わされてしまいそうだ。
 だが、ぼくには、夜こそ、世界の本当の姿だという気がしてならない。昼は厚化粧をしすぎているような気がする。

wildsum について

I am a Japanese language teacher. I like to soccer and cooking,walking.
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