帰宅時に乗った電車が人身事故に遭遇


 4月12日夜9時55分退社。山手線大塚駅まで走っていく。何とか、9時59分の電車に間に合う。10時18分、山手線渋谷駅で下りて、田園都市線20分発の急行電車に乗るために、地下三階の田園都市線ホームまで駆け下りて行く。だが、あまりに人が多くて自由に走れない。やっとでたどり着いたホームで、開いてるドアから乗り込もうとするが、乗客がすでにはみ出している状態で、乗り込めそうにない。他のドアはどうかなと一瞬、躊躇をしたのがいけなかった。ドアは無情にも閉まってしまった。

 10時27分、次の急行電車が到着。この電車も満員だが、先頭に並んでいたから乗ることはできた。だが、後から乗ってくる人で、ギュウギュウ押される。次の駅で、また、どっと人が乗ってくる。乗ってきた乗客によって、いろいろな位置関係が変わる。新しくわたしの前に位置を占めたのは若者だった。その若者の背中が不気味に、ヒクヒク、ヒクヒクと痙攣している。なんとなく気持ちが悪い。体が自由に動かせる状態ではなかったが、少し体を移動させて、向きも変えた。すると今度は両隣にいるおじさん二人がわたしの右耳の位置と、左耳の位置で話を始めた。それが酔っているようで、声がうるさい。何しろ、わたしの耳元で話すのだ。すごいステレオだ。聞きたくもないステレオを無理やり聴かされるようなものだ。これは拷問に近い。それに、右のおじさんはわざとではないだろうが、突き出たお腹をわたしの腰に押し付けてくる。ひどく気分の悪い状態のまま、ほとんど身動きできぬまま、電車は走り始めた。

 電車が発車して20分くらい経過した9時45分ごろ、最寄り駅まであと5駅というところで、電車は急停車。嫌な予感がした!しばらくして、車内アナウンスが、こともなげに、

 「ただ今、この電車におきまして、人身事故が発生しました。」

と告げる。まさか、このまま、電車内に閉じ込められたまま、明日を迎えることになるのではと恐怖を感じた。と同時に、渋谷駅で躊躇せずに、満員の中に無理やり乗り込んでいたら、階段を下りるとき、人を押しのけてでも走っていたら、会社をあと5分早く出ていたらと、つい、反実仮想の「たら」を連発して考えてしまう。

 その時、右隣のおじさんの話し声が聞こえてくる。電車は宮崎台駅(急行が止まらない駅)を通り過ぎた直後に急停車したらしい。車窓から駅のホームは見えないが、後部車両がこの駅のホームにかかっているらしい。いずれにしても、ここで慌ててもしかたない。わたしは落ち着くことにして本を読み始めた。

 電車が止まって、15分くらいたったころだろうか、今、最後部の車両のドアを開けたので、下りる方は最後部の車両に移動して降りるようにというアナウンスがあった。かなりの人たちが後方へ移動し始めた。わたしの場合、ここで下りても、我が家までまだかなり遠い。降りても仕方ない。大半の人が同じ思いなのだろう。動こうとしなかった。といっても、超満員の電車だ。3分の1の人が移動し始めただけでも大移動だ。後方へ移動する行列が渋滞してなかなか動かない。大移動が始まって15分くらいしたころ、車内がだいぶ空いてきた。といっても、超満員から、普通の満員になっただけだ。

 さらに10分ぐらい経過した頃だろうか、車内アナウンスで、振り替え輸送のバスがあるという。これを聞いたわたしは、代替バスに乗れば、我が家の近くまで行ける。そこからタクシーに乗るなり、歩くなりすればいいと思い、移動を始めた。10分近くかかって、ようやく最後尾の車両に着いた。そこから、ホームに降りてみると、たくさんの人がホームのベンチに座り込んでいる。車両の一番後ろには車掌がいる。その周りには数人の乗客たちが詰め寄るように集まっていた。険悪なムードが漂っていた。

 「代替バスがあるっていうから、バス乗り場まで行ってみたけど、ないって言うじゃないか。どういうことなんだ」

 「おい嘘をつくなよ」

 「申し訳ございません。ちゃんと確かめてなかったもので」

 「そんな言い訳はいいよ。どうすればいいんだ。このまま乗って待ってろということか?」

 「それしかないと思います。0時には運転再開できる見込みですので」

 時計を見たら、今11時半。あと30分待てということのようだ。わたしも聞いてみた。

 「電車が動いている駅まで何キロくらいありますか」

 「かなりありますね。」

 「歩いたらどのくらいかかりますか」

 「そうですね。30分くらいかかるでしょう」

 「じゃあ、このまま乗って待ったほうがいいということですね」

 11時45分頃、「ただ今事故処理が終了し、電車の安全点検を行っております。安全点検が終了しだい、運転を再開いたします」というアナウンスがあった。結果、ほぼ0時、電車は運転を再開した。二駅先まで動いた後、事故を起こした車両は、一旦、車庫に入るらしく、乗客たちはみな、別の各駅停車に乗り換えた。最寄り駅に着いたのは12時20分ごろ。それからバスに乗る。バスは420円の深夜料金になっていた。わたしは運転手に聞いてみた。

 「電車の事故で遅れたのに、深夜料金を払うんですか」

 「いえ、けっこうです」

 運転手は料金を通常の210円にもどしてくれた。

 遠い我が家へたどり着いたのは12時45分頃だった。およそ、2時間50分の長旅だった。それから簡単な食事を作り、シャワーを浴びたら、もう2時を過ぎていた。

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wildsum について

I am a Japanese language teacher. I like to soccer and cooking,walking.
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