自分には自分に与えられた道がある。天与の貴い道がある。どんな道かは知らないが、他の人には歩めない。自分だけしか歩めない。二度と歩めぬかけがえのないこの道。広い時もある。せまい時もある。のぼりもあればくだりもある。坦々とした時もあれば、かきわけかきわけ汗する時もある。

この道が果たしてよいのか悪いのか、思案にあまる時もあろう。なぐさめを求めたくなると木もあろう。しかし、所詮はこの道しかないのではないか。

あきらめろと言うのではない。いま立っているこの道、いま歩んでいるこの道、ともかくもこの道を休まず歩むことである。自分だけしか歩めない大事な道ではないか。自分だけに与えられているかけがえのないこの道ではないか。

他人の道に心をうばわれ、思案にくれて立ちすくんでいても、道はすこしもひらけない。道をひらくためには、まず歩まねばならぬ。心を定め、懸命に歩まねばならぬ。

それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道がひらけてくる。深い喜びも生まれてくる。

《松下幸之助『道をひらく』1968年5月1日発行》

※松下幸之助(まつしたこうのすけ) :(1984年11月27日-1989年4月27日日本の実業家、発明家、著述家。パナソニック(旧社名:松下電気器具製作所、松下製作所等)を一代で築き上げた経営者。経営の神様と呼ばれる。

 

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