地震、津波、大雨、台風、雷、それに火事は本当に恐ろしい。といっても、昨日、家が揺れた時、「来たな!どこまで揺れるのかな!」と静観していた。「けっこう来るな!」と思いながら、数十秒間、揺れる家具類を冷ややかに見つめていた。
だが、母が「怖い!怖い!」とおびえているのを見ると、早く止まってほしいと願う。母が怯える姿を見るのは本当に辛い。母には残りの人生を面白おかしく生きてほしい。少しでも人生を生きてよかったと思ってほしい。
何であれ、ぼく自身の体に何があっても怖くない。例えば、今、突然、ボクの心臓がとまっても、また、天災があって、ぼくが死ぬとしても、まったく気にしない。ぼくは精一杯生きてきたのだから、悔いはない。
恐るべきものは自然ではない。自然の恐怖は太古からあるものであり、反面において、自然は恵みも与えてくれる。それが当然のことだ。自然はしばしば人の命を奪ってきた。恨み節も言いたければ言ってもいいが、それも自然の前には虚しい。
自然よりも恐ろしいものは人間だ。人の作ったもの。文明のもたらしたもの。自然ではないものだ。さらにぼくが恐れるのは自分自身だ。それこそ本当に恐ろしいと思っている。知らない間に人を傷つけている。生きている限り、人は人を傷つける。