また眠れない夜


 夜、布団に入る前、お休みと言ったあとでまた起きてきて、酒を飲み始めた母に対して、少し厳しい声で言った。

「早く寝て!もし寝られなかったら、起きててもいいから、飲みすぎるのだけはやめて!」

 すると、母はえんえんと泣きながら言った。

「ごめんね!迷惑かけて!あなたを助けたいのに、ごめんね!」

 これには参った。これまで何度もこの言葉を聞いているが、こんなふうになった母を説得するのは難しい。ぼくは少し声を荒げて懇願した。

「僕にとっていちばんの迷惑は、そうやって、酔っぱらって、泣いたり、どこかに体をぶつけて怪我したりすることなんだよ。」

 母は何とか自室に戻り、自分の布団に入ってくれた。だが、ぼくのほうは興奮がおさまらず、またもや、夜が開けるまで、布団の中で、じっとして、ただただ起きている。今、6時を過ぎた。夜が明けた。ただ、台風のせいか、空は雲に覆われていて、先日のような素敵な朝の景色は見られない。

 ぼくはめげそうだ。母の健康を願う気持ちが強すぎるのかもしれない。「なるようになれ」という気持ちになったほうがいいのかもしれない。少しでも認知症になるのを遅れさせたいと願うなら。

 要介護1の母は、日に日にほんの少し前のことも忘れることが多くなっている。食事したかどうかも覚えていないことが多くなった。毎晩酔って、翌日には昨夜のことを覚えていない。今日は何日か何曜日かもわからない。

 散歩に行くのも難しくなった。だが、ここでめげていてはいけない。初心忘れるべからず。母と暮らすことを決めたのは自分だ。精一杯生きて、精一杯優しくしてあげなければならない。

 かつての思いを忘れることなく、母をリスペクトすることが大切だ。そうだ、絶対に忘れてはいけないこと、それはどんな時でも、どんな相手であっても、相手をリスペクトすることだろう。

 

wildsum について

I am a Japanese language teacher. I like to soccer and cooking,walking.
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また眠れない夜 への2件のフィードバック

  1. YUTA録 より:

    相手をリスペクトする…それって人と人が接する上で、一番大事にしないといけない事なのですが、ついつい忘れて相手を恨んだり、見下したりしてしまいます。本当に心に刻んでおきます。私が言うのもおこがましいですが、どうぞお母様をお大事になさってください。

    いいね: 1人

    • wildsum より:

      ありがとうございます。つい忘れてしまうことです。忘れないために書いたのですが、今日も母に「何度同じことを聞くの?」と怒鳴ってしまいました。反省です。

      いいね: 1人

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