アホとバカ!


 小さい頃、兄からいつも、「どアホ!」と言われていた。友人の間でも、「アホか、お前は!」などと言い合ったりしていた。一方、「バカ」はめったに使わない。本気で怒った時だけ、「バカ!」あるいは「バカヤロー!」と相手を罵っていた。

 関東に引っ越してから、驚かされたことがある。行きつけのジャズ喫茶があって、その店のマスターがお客さんや従業員に対して、何度も「バカ」と言うのだ。これはどういうことだろうか。

 人から聞いた話だが、関東では相手に親しみを込めて、「バカ」と言うらしい。反対に、大阪あたりから西の方では、相手に親しみを込めて使うのが「アホ」なのだ。兄の言っていた「ドアホ」が納得できる。では、関東で「アホ」はどんな時に使うのだろうか。喧嘩するときなのだろうかと思った。

 これを実証する場面に出会ったことがある。例の行きつけの店に九州から来たという船乗りさんが入ってきた。マスターは相変わらず、客に向かって、繰り返し「バカ」と言う。九州人は「マスター、あんたアホか?」と言い返す。

 そして、事件が起こった。マスターが、ビール瓶をテーブルの角にぶつけて、ガシャンと割って、「金は要らない、出てけ!」と言ったのだ。九州人の客も怒って、「表へ出ろ!」となった。ぼくは間に入って仲裁しようとしたら、マスターに殴られてしまった。

 その後、二人がどうなったか知らない。ぼくはものすごい喪失感を味わいながら、トボトボと家に帰った。そして、二度とその店に行くことはなかった。

wildsum について

I am a Japanese language teacher. I like to soccer and cooking,walking.
カテゴリー: エッセイ, 日記, 日本語 パーマリンク

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