11歳の夏、家族と一緒に、九州から東京へ旅行したことがある。高層ビル群を見て、驚くと同時に憧れた。
14歳の夏、家族で東京の隣の県に引っ越した。東京はすぐそばだったが、遠かった。切符を買おうにも金がなかったし、行く時間もなかった。
17歳の夏、友達と二人、予備校を見学するために新宿に行った。高層ビルと複雑な構造の駅に、驚いたが、同時に東京都いう都会に嫌悪感を感じた。
大学生になっても、社会人になっても、東京の近くに住んでいた。時折訪れるものの、相変わらず、好きになれなかった。
東京は誰もが憧れるところ。みんなが夢を描く都会だ。だが、何故だか、東京は住むところではないと、ずっと感じてきた。
実を言うと、1ヶ月だけ、東京に住んだことがある。それは最悪の思い出だ。その時以外はいつも東京の近くで生活している。いつも、東京の近くにいながら、東京に憧れ、嫌っている。
東京とは、憧憬と嫌悪が同居するところ、夢と絶望が同居するところ、近くて遠いところ、まるで蜃気楼のような町だ。