「人民共和国」という名の国家があるが、ここでは、確かに「人民による、人民のための政治を、人民たちが行う」。だが、その「人民」というのは、一つの思想を共有する者たちだけの呼称であるらしい。国民全体は入らないという。
学校では、一つの思想を持つように強制される。それでも、異なる思想の持ち主がいたら、洗脳され、思想を強要される。異民族たちは、独自の文化や宗教、言語を奪われる。
だが、異なる思想の持ち主も、異民族も虐待の対象になり得る。何しろ、国民ではあっても、人民ではないのだから、基本的人権はなくて、政府に服従する義務だけがあるらしい。
彼らがどれだけ虐待されても、これは「我が国の『民主主義』だ」という。隣人たちは誰も口を出せない。なぜなら、彼らが、金と経済の大きな力を持っているからだ。隣人は見て見ぬふりをするほかないらしい。
「人民」というのは、民主主義のキーワードだと思っていたが、世界にはいろいろな「民主主義」があるようだ。一部の「国民」だけが「人民」として尊厳を保たれ、それ以外の国民には人権も人間の尊厳もない。これでは、「民主主義」という名の仮面をかぶった「独裁国家」にほかならない。